CoCリプレイ感想『るるいえあんてぃーく』

「もっと食べたい」や「杉山屋敷怪異譚」といったクトゥルフ神話TRPGの名シナリオを作成されている内山靖二郎氏のリプレイ集、『るるいえあんてぃーく』。

出版は2009年とすでに8年前の本ですが、ゲームショップに並んでいたものを衝動買い。この本は「ログインテーブルトークRPGシリーズ」と銘打たれてエンターブレイン社から販売されているTRPGのリプレイ集で、内山氏がKPを務めるキャンペーンシナリオの1巻目となっています。(登場PCは異なりますが)

同シリーズで有名なのは『るるいえっびぎなーず』だろう。キャンペーンものではないが、クトゥルフ神話TRPGの入門書かつシナリオ「彼方より来る」が掲載されているため、所有されている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ログインテーブルトークRPGシリーズのクトゥルフ神話TRPGリプレイ『るるいえあんてぃーく』のレビューという形で、ネタバレを極力せずに、紹介をしていきたいと思います。

ルルイエアンティークの感想

全般

本リプレイは全3シナリオから成り立つキャンペーンシナリオで、それぞれが内山氏の書き下ろしのシナリオになっています。シナリオの前後には、そのシナリオの制作背景や動機などが描かれ、どのようにシナリオを実際に作られているのかがわかるようになっています。

内山氏のシナリオをプレイしたことのある方ならよくご存知かとは思いますが、全体的に難易度は高めになっています。1シナリオで1人は死人が出てもおかしくないくらいでしょうか。かといって理不尽な難易度ではなく恐怖を演出しているので、とても”クトゥルフらしい”シナリオになっています。

本リプレイにはシナリオは付随していませんが、描写やロールの内容からある程度どのようにシナリオが組んであるかはわかるようになっています。擬似的にセッションで使われたシナリオを再現して組み直すことも可能でしょう。(私も再現をしてみようと思っていますが、著作権の関係上、公開はできないかと思われます)

シナリオ第1話:多面寄せ木細工事件

舞台は現代日本。骨董品の店番をしている女子高生の元に多面寄せ木細工を開けて欲しいと依頼をしていた人が訪れることから始まる、クローズドシナリオになっています。

シナリオ自体は比較的シンプルなものですが、本誌内の内山氏の解説にもあるように、クローズドシナリオを面白くするためのイベントが多く組み込まれています。

探索者たちも魅力的で、若干メタい部分はあるものの、全編を通して一気に読んでしまいました。

シナリオ第2話:ピックマンの絵画事件

舞台は第1話の半年後の夏。シナリオは骨董品店に依頼のあった書籍を届けに山口県に向かうところから始まります。今度はスプラッター気味のシティシナリオです。キャンペーンらしく、第1話の登場人物が深くシナリオに関わってきていますね。

途中の描写やギミックが結構猟奇的で、内山氏も後日談で「やりすぎた」とおっしゃっていましたが、リプレイとしてみている分にはそれほど気持ち悪さはなかったかと。(CoCのやりすぎで若干耐性はできていますし)

原作の小ネタもチョイチョイ挟みつつ、相変わらずの難易度でこちらもシナリオを回してみたくなる展開でした。

シナリオ第3話:るるいえ堂盗難事件

今度は冬の寒村が舞台。PCの1人に町おこしの手伝いをしてほしいとの依頼から探索者たちは事件に巻き込まれていく。寒村に伝わる伝承をテーマとしたシナリオで、上記2シナリオが謎解き型であったのに対し、今回は怪異から逃げ惑うという、なんとも内山氏らしいシナリオでした。

本誌のキャンペーンの最終作ということもあり、SANの減少が多めな印象でした。その分、全体的な盛り上がりがこの話に持ち込まれています。(特に、入浴シーンのキーパリングは是非真似したいと思えました)

シナリオ間のインタビューでは、寒村型のシナリオを作成するときのポイントなども記載されており、参考になるものでした。1つだけ残念だったのは、前話の魅力的なNPCがでてこなかったことくらいでしょうか。

ルルイエアンティーク総括

キャンペーン全体を通してみると、タイプの異なる3シナリオをバランス良く組み合わせたキャンペーンだなと。謎解きメインの1話、アクションっぽい2話、怪異から逃げ惑う3話。それぞれが特徴的で内山氏の引き出しの多さには脱帽でした。

また、内山氏のシナリオをみていると、かなり堅い、アンティーク調なGMを行うイメージでしたが、本作のターゲット層や特性もあってか、意外と親しみやすいキーパリングをする方だなと。

個人的には(作中でもPLの方が賞賛していましいたが)、第2話がバランス的にも探索的にも好みのシナリオでした。時間があれば改変シナリオとして卓を開きたいなと。

実は続刊の『るるいえはいすくーる』も購入済みなので、時間を見つけて読み進めていこうと思います。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です