CoC関連書籍レビュー「ゴシックハート」

今回は、クトゥルフ神話TRPGのシナリオ作成や GMの描写の参考になった書籍をご紹介します。

様々なゴシック的概念について書かれた奇書「ゴシックハート」

新宿の紀伊国屋書店で別の本を探していた際に、偶然陳列されていた本なのですが、文庫サイズの本ながらその装丁は凝ったもので、余白部は黒く塗られ、白と黒のモノトーンがよりこの本のテーマの1つである『様式美』を体現しているかのようです。

その装丁に興味を惹かれ前書きを見ると、どうやら『ゴシック』という概念について、主に小説や映画、アニメなどを題材に『恐怖と怪異』『様式美』などを軸に語ったもののようで、クトゥルフ神話TRPGのシナリオフックになるかと思い、購入をしました。

この本を読むと、クトゥルフ神話TRPGにつながるような怪異的な描写や恐怖の描写などをゴシック精神の考え方に沿って語られています。

「ゴシックハート」で取り扱っているテーマ

ゴシックハートでは様々なゴシックに関するテーマについて扱われている。

1  ゴシックの精神——ゴシック・ロマンス/ゴシック・ロック/「ゴス」
2  人外——中井英夫/江戸川乱歩/『フランケンシュタイン』/「吸血鬼」
3  怪奇と恐怖——『アッシャー家の崩壊』/ホラー小説
4  様式美——三島由紀夫/澁澤龍彦/建石修志/村上芳正/シジスモンディ
5  残酷——『責苦の庭』/大蘇芳年/サド
6  身体——『攻殻機動隊』/『銃夢』/『へルター・スケルター』
7  猟奇——E・A・ポオ/海野十三/S・キング
8  異形——楳図かずお/『のろいの館』/『みにくい悪魔』/『おそれ』
9  両性具有——マリリン・マンソン/浅田彰/『ポルポリーノ』
10 人形——ベルメール/四谷シモン/三浦悦子/マリオ・A
11 廃墟と終末——フリードリヒ/『デビルマン』/『新世紀エヴァンゲリオン』
12 幻想——キャリントン/バロ

目次を見るだけでも、ワクワクしてくる方も多いのではないでしょうか?

今回は、中でも特にクトゥルフ神話TRPGの描写やシナリオ作成に役立ちそうな内容があった項目をピックアップしたいと思います。

1.  ゴシックの精神

ここでは「ゴシック」という概念を15ページという少ないページ数で端的に語られています。すでにこの冒頭を読んだ時から、クトゥルフ神話TRPGの畏怖感とゴシックの概念の中の畏怖が近いものであることがわかるでしょう。洋館の館主やマッドサイエンティストなど、様式美に深いこだわりを持つNPCが黒幕となるシナリオのアイデアが掻き立てられます。

2.   人外

いわゆる狂信者や狂人といった人物に限らず、見た目の醜いものや、何かしらの怪異に取り憑かれたものの例として、江戸川乱歩の諸作品や『フランケンシュタイン』、『吸血鬼』といった作品を扱っています。GMの時のみならず、PCのRP際(特に狂信者や犯罪者)の参考にもなることでしょう。気が狂ってしまった人間だけではなく、生まれ持った醜い容姿ゆえに人外と見なされた存在など、ヴァリエーションに富んでいます。

4.  残酷

残酷描写の”粋と無粋”について言及されています。クトゥルフ神話TRPGのシナリオの描写の中にも、残酷な行為を行うNPCの描写が入ることは多々ある。そんなシーンをいかにスマートかつより残酷に表現するかといった点においては大変参考になるでしょう。

7.  猟奇

ここではいわゆる狂った発想の元、人体に対して何かしらの残酷な処置を行う際の描写について描かれています。先述の残酷が人体への損壊などの行為を指すのに対して、猟奇は人体改造や身体欠損といったより非痛覚に焦点を当てた描写の参考になることでしょう。このあたりからは描写の紹介というよりも、そのテーマに対するゴシック愛好家視点からの見解を述べられるような形になっています。

おわりに

本書に於いて、一貫して語られるのは『様式美や耽美さに沿った恐怖や怪異』である。いわゆる洋風のクトゥルフ神話TRPGシナリオを作成するにはアイディアの宝庫になることでしょう。

ただし、本書の内容に関しては、元々上記のようなゴシックな考え方に興味がある人でないと、中々読み解くのは困難かもしれません。いわゆる随筆になるので、堅苦しい表現も多いです。しかし、その雰囲気も合わせて、ゴシックの精神を感じられる1冊となっているでしょう。

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